in 唐臼の郷 鍛冶ヶ沢から
清流に遊ぶ

今時期の川は限りなく透明で、そこまでくっきりと見えるのである。
こっちから見えるということは、魚にとっても見えるということで、竿の届く範囲で釣ろうとすれば先に感ずかれることになる。
自家製のイクラを持ってゆくが、これがさっぱりだめで、使い物にならない。作り方が悪かったとみえる。
しょうがなくそれを捨てて、川の石についているヒラタカゲロウを探してみることにした。
この時期の水は冷たくてとてもまだ小さいだろうと思っていたのだが、実際石を起こしてみると結構大きなサイズになっている。これなら餌として申し分ない。
だいたいにして、川の水がさほど冷たさを感じないのだ。これも温暖化の影響なのだろうか。
まだこのあたりには雪も残っているし、雪解け水であることには違いないのだが、川面が凍っているところなどないのだ。まあ豆腐造りで冷たさに慣れたせいもあるのだろうが、妙に冷たさが心地いい。
以前だと鼻水たらして震えていたのだが、全く寒さは感じなかった。
明らかに春の様相なのである。しかし基本的には深みや大きな石のまわり、木下などにいるのが一般的なのだが、もう瀬の中で捕食している可能性が高いと思われた。
餌は申し分ないが一向にあたりが来ない。魚影も見当たらない。いや、向こうが先に感ずいて隠れてしまっているに違いない。
歩けども一向に釣れない、ようやくこのポイントならというところに着く。あえて急な流れのわきを攻めてみることにした。予想通りだ、流してすぐ食いついた。
しかし、柔らかい竿と細い糸で釣るこのやり方は集中力がないとあたりの瞬間がわからないことがある。糸は0.25という細いやつだ、以前はもっと細いものを使っていたが、年とともに糸が自分で見えないのである。魚をだます前に自分がついてゆけないことになってきた。針は返しのない針を使う。
小さいものはリリースするのだが、飲みこんだときや、外す際の魚のダメージを考えると、こいつが一番いいと思える。逃がすことも多いが、そのやり取りがまたいいのである。
以前このブログで釣りのことを書いたら魚の写真がなかったということで信用できないとの話もあったので今回は美しいその姿をご覧いただきたい。

小型ではあるが正真正銘の山女魚(ヤマメ)なのだ。
ヤマメの瞬間的な引きが何ともいいわけで、この感覚は釣り人を引きつける。
だがそれが災いしてか、道具が進歩しすぎたか、釣り師が増えたか、いまでは放流しない川などないのではないかと思える。そんなことを考えると何とも微妙で複雑な気持ちになってくるのだ。
しかしながら水量は昔ほど多くはないものの、美しくきれいな流れは今でも変わらないのである。